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2014年5月17日土曜日

プリントにかかるお金とその節約について

写真と暗室技術について発信するという名目で書いているこのブログだけど、いつも抽象的なことばかりで具体的なことを書かないので、今回は役に立つ(?)ことを書きたい。

まず、暗室は、けっこうお金がかかる。
つい先日、富士フイルムが暗室関連用品の価格を全面的に【3割増】するという衝撃的なニュースを聞いて絶望したものだが、それだけもうニッチな産業になってきてしまったということだ。

別にどんな趣味でも生業でも、かけようとすればかかるし、かからないようにすればかからないわけだから、やり方の問題なんだけど、ちょっとした工夫で出費を抑える効果が出て、なおかつプラスαの効果が出たらサイコー!だと思うので、この暗室で実際に行われているプチ財テクを紹介します。

(そもそも暗室の競技人口が少ないので、他の人には役に立たないのだが…)

そもそも、暗室にかかるお金とはなにか?というところまで細かく遡ると大変なので、ひとまずプリントするたびに減っていくもの、消耗品について。今回は特に【紙】を節約するツールに絞って紹介したい。

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プリント(引き伸ばし)とは、ざっくり言うと、ネガというオリジナル情報を「どのくらいのサイズで、どのくらいのコントラストで、どのくらいの濃さで」印画紙に焼き込むのか?ということだ。テストプリント、とひとくちに言っても、さまざまなテストがある。

暗室の世界では、コントラストは「号」という単位で判別される。

※コンピュータ上でいじくったコントラストなので実際とは少し違う

もうずっと昔には、このコントラストの違いを、コントラストが「低く焼ける紙と高く焼ける紙」を別々に用意して、適切なコントラストで焼ける紙はどれなのか?というテストをしていたらしい。これを「号数紙」というが、現在では圧倒的に数が少なくなった。

それでは不便だし金がかかってしょうがないということで、1枚の紙の上で自由にコントラストを変えることが出来る紙が発明される。それがバリグレードとかマルチグレードとか呼ばれる、現在主流になっている紙だ。

これは引き伸ばし機のレンズの下に色の違うフィルターを挟んで光の色を変化させるもので、マルチグレードの印画紙の場合は、反応しやすい色が異なる複数の薬品が何層かに分かれて塗布されている、みたいな仕組みになっている。

当時はこの画期的な紙について、保守的な勢力は「号数紙の方が諧調が豊かだ!」とか「こんな紙でまともなプリントができるものか」などと散々に叩いたらしいが、時代の移り変わりとともに、金のかからない便利なものが残っていったようである。

そして、次第に「ネガの要らない、プリントの必要すら無い」時代へと移行してゆく。

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ということで、号数を変えるためにはフィルターを変えるわけだが、その次は「どのくらい焼くのか」というテストがある。

印画紙は一般に、長時間光を当てれば当てるほどに、現像したときに色が濃く出るので、ちょうどいいところで光を当てるのをやめなければいけない。

その焼き具合を見るのに「ストライプテスト」というものを行うことがある。
専用の道具もあるにはあるが、いかんせん、高い。かといって手作業でこれを行うと、段差がまちまちになったりして気分が良くない。

作ってしまえ!ということで、印画紙の空き箱でストライプテスターを作ってみる。

ストライプくん1号

大カビネ(ハガキくらい)のサイズ

ジェンガのブロックを使用している

ジェンガを敷き詰めるとこうなる

1つ取り除いた状態で「1段目」を焼き込む

2つ目3つ目、とズラしながら、違う焼き時間で焼き込む

すると、こういう「同じ号数で8段」の時間差プリントができあがる
※もちろん、同じ焼き時間で号数違いのテストもできる

きわめて贅沢に、この1段1段を、紙の全領域を使ってバンバン焼いては現像して…という方が、より広い範囲のネガ情報を確認できるわけなんだけど、そんな金はない!

ので、これでだいたいの秒数を探ったら、次はもう少し大きな紙と大きな領域を使って、もうちょっとだけ贅沢に、より探る範囲を狭めてテストプリントをする。

ストライプくん2号(六切用)

うしろから指で押して紙を外すための穴が空いている

こんな感じにビラビラしている(5段)

暗くても見えるように、ツマミは白い紙でできている

ズラして焼いて、ズラして焼いて

こんな感じに「5段」焼ける。5枚焼くより安い!


結局のところ、なぜこのようなテストが必要なのか?というと、修行が足りないからなのである。もし神業的なイカレプリンターがいたら、ネガをちょっと光に透かして眺めただけで「うーん、3号で8.3秒…で、さらに4号半で2.7秒、黒を沈めましょう」と言い当てるのだろうが、残念ながら今はその境地に近づこうとすることしかできない。

もちろん、今は「ボタン一発」で、それが実現するのだが、果たしてそれは「実現」なのか?というところにいくと話がブッ飛ぶので割愛する。

巧くなればなるほどに、テストプリントの数は少なくなる。というと語弊があるが、より良いプリントの追求に必要なテストの、何をどうテストしようとしているのか?という宝探しの、広大な土地を掘り返す範囲をより狭くしたぶんだけ、より深く掘り返す時間とお金とが生まれることは間違いない。

ネガの性格、暗室の性格、そして何より、プリンターの性格によるものが大きいが、テストプリントには、本番の作品と同じくらい、たくさんのおもしろい個性が潜んでいるものだ。

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【おまけ】すべてのネガにつけてる手書きのプリント記録



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